【ゲーム批評】ソードアート・オンライン フェイタル・バレット 批評

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今回はバンダイナムコエンターテインメントから発売されたTPSゲーム「ソードアート・オンライン フェイタル・バレット」の批評です。

内容はゲーム本編やソードアート・オンラインの原作のネタバレなどを含む為、未プレイの方や原作作品を未読・未視聴の方はご注意ください。

また、批評にはオンラインやDLCの部分は含まれておりません。

概要

このゲームは人気アニメでありライトノベルでもあるソードアートオンライン(SAO)シリーズを元にしたTPSゲームで、家庭用とPC用が発売されております。

本作の主人公は原作SAOの主人公であるキリトでは無く、初めて仮想現実のゲームをプレイする一般人という設定になっており、ガンゲイル・オンライン(GGO)と言う銃撃戦主体の仮想現実ゲームを舞台にして、主人公とその幼馴染であるクレハが、特別なミッションで報酬として受け取った人形AI「アファシス」と出会った事を切っ掛けに、GGO内で出会う様々なプレイヤー達との関わり合いを通してオンラインゲームを楽しみながら、その裏で起きる事件や陰謀などに巻き込まれていく過程を描いた作品となっております。

原作のメインキャラクター達は主人公のフレンドとして登場し、クエストに同行するなどして共にストーリーを進めていく事になります。

また、ゲームをある程度進めると途中からプレイヤーキャラをキリトにできる「キリトモード」というものが開放され、キリトとしてデスガンと戦う原作の流れを体験することも出来ます。

特徴

本作はキャラクターエディット要素があり、オンラインゲームのキャラエディットらしく外見をある程度自分の好きなように弄ることが可能です。

また、戦闘面の特徴としては視界に入った敵が自動的にロックされ、その状態で攻撃を行うとほぼ必ず敵に攻撃が命中するという所謂オートエイム仕様となっている点があります。

ただオートエイム状態では敵の弱点である頭部などには殆ど攻撃が当たらないため、弱点を狙いたい場合は右クリックで武器を構えてオートエイムを解除し、自分で狙いをつける必要があります。

プレイヤーは銃を用いた射撃だけでなく自身の攻撃力を強化するスキルや、グレネードなどのガジェットを使用する事が可能である他、レベルが上がるにつれてSTRやDEXなどの各ステータスを成長させる事が出来たり、原作アニメでも描写されていた敵に銃で狙われた際に出てくる「弾道予測線(バレット・ライン)」が表示されるなど、SAO原作の要素が多く取り入れられております。

また、GGOの世界はプレイヤー達が買い物をしたり情報収集が出来る都市「SBCグロッケン」と、敵NPCやプレイヤーが徘徊する幾つかの「フィールド」で構成されており、街中では武器の強化や改造、情報収集を行い、クエストなどはフィールドに出て進めていくことになります。

悪いと感じた部分

ガジェットやスキルを使用する際の操作性の悪さ

戦闘中は銃撃だけでは中々倒しにくい敵も出てくる為、グレネードや回復ツールなどのガジェット、自身に対してのバフや敵へのデバフが行えるスキルを使用する事で戦闘を有利に進めることが可能なのですが、それらを使用する際の操作性が少し悪いです。

仕様上ガジェットやスキルはプレイヤーがジャンプも射撃も一切何もしていない状態でなければ発動できない様になっている為なのか、ボタンを押してもすぐにガジェットやスキルが発動しないことがあり、敵への対処や味方への援護が遅れてしまう事がありました。

特にガジェットのグレネード系は、自身が照準を向けている方向ではなく自キャラが移動している方向へ投げる仕様になっているので、他のゲームと比べて明らかに正確な方向に投げにくく、もどかしい思いをすることが多かったです。

この辺りは他の動作をキャンセルして使えるようにしたり、グレネードは照準を向けている方向に投げる様にするなど、もう少し操作性を良くして貰いたかったです。

友好度上げが殆ど作業となってしまいがち

このゲームで共闘できる仲間達にはそれぞれ主人公との友好度というステータスが有り、これらは戦闘やクエストクリアなどによって増加し、ある一定の数値に達する毎に専用の会話イベントやCGなどを見ることができるのですが、通常プレイではその友好度があまり稼げず、普通にストーリーを進めているだけでは数人にキャラクターの友好度をMAXにするのも苦労する程なので、多くのキャラの会話イベントを見たい場合にはほぼ必然的に友好度稼ぎの為の作業を強いられる形になっている点に不満を覚えました。

ちなみに作業の内容は、「仲間をわざと敵の攻撃でダウンさせてから蘇生を何度も繰り返す」という行為をPTメンバーを入れ替えて繰り返すという物です。

本作の友好度の増加ポイントは「味方を回復する」「クエストをクリアする」などの特定の行動によって異なるのですが、その中でも最も友好度の上がる行動が「味方を蘇生する」という事なので、この作業を行えば大体30分から1時間弱程度でPT内の仲間の友好度をMAXにすることが出来ます。

友好度MAXのボーナスが単なる専用の会話イベントやCGだけであれば、正直やり込んだご褒美として別に悪くないと思うのですが、本作では特定の仲間との友好度を最大近くまで上げることがトゥルーエンドの条件になっていますので、完全クリアの為にエンディングを全て見ようとする方はほぼ必ずこの行為を行う必要があるので、これはプレイヤーが無駄な作業を強要されてゲーム性を損ねる部分になっている様に感じました。

せめて友好度の上限自体がもっと低く、必要になる友好度がそれほど多くなければ良かったのですが、トゥルーエンドの条件にも関わるステータスにするのであればその辺りを考慮して欲しかったですね。

トゥルーエンドの条件が分かりにくい

作品はトゥルーエンドと2つのバッドエンドがあるマルチエンディング方式になっているのですが、トゥルーエンドの条件が作中で明確に示されることが無いので、攻略サイトなどを見ないプレイヤーだと到達するのが難しい様に思いました。

トゥルーエンドに行くためには

1.アファシス、クレハ、ツェリスカ、イツキ、ジョーの友好度を4.75%以上にして発生する会話イベント(マップ上に緑色の吹き出しで表示)をすべて見る。

2.その他のキャラの友好度を2以上にして発生する会話イベントをすべて見る。

3.1と2の条件を達成した後にホームに戻ってアファシスから「アファシスのお守り」を受け取る。

4.ラスボスとの戦闘で黒い弾をチャージし始めたら口の中の弱点(青い部分)を撃って攻撃を中止させる。

という4つの条件を満たさなければいけません。

一応1から3までの条件を満たしていると、ラスボスとの戦闘を行うクエストが発生した際に、クエスト名がバッドエンドルートの「エンドオール」から「フェイタル・バレット」に変化するというヒント(?)はありますが、最後の流れ以外は会話内容などもバッドエンド時の物と変わらないので分かり辛く、そもそも条件も少し複雑なので、出来ればゲーム内で明確な説明などが欲しかったですね。

味方のAIの作りが少し悪い

戦闘時には任意に選んだ3人の仲間を連れて行けるのですが、その動きに若干不満を覚えました。

仲間はこちらが命令を出さない限り基本的にこちらに付いてきてくれるのですが、ダンジョン内などの少し地形が複雑であったり、高低差があったりするような場所に入ると地形に引っかかったり穴を飛び越えられなかったりして、上手くこちらに追従してくれない時が結構ありました。

救済措置として一定以上プレイヤーと距離が離れると近くにワープしてくるようになっているので、完全に引っかかって動かなくなるということは無いのですが、中途半端な距離だと瞬間移動してきてくれずに戦闘中にこちらを援護してくれなかったりと割と致命的な状況になったりもしましたので、少し引っかかった場合にはすぐにこちらの近くにワープするようにして欲しかったですね。

また、戦闘面でも敵の攻撃をあまり回避してくれないので結構頻繁にダウン状態になってしまう点があります。

本作ではモンスターハンターシリーズのように緊急回避の前転をタイミング良く出す事によってある程度の敵の攻撃を回避することが可能なのですが、味方AIはその緊急回避のタイミングが悪いのか、或いは最初から使っていないのか分かりませんが、敵の攻撃がクリーンヒットしているところをよく目撃しました。

特にプレイヤー側でも若干避けるのが難しく、威力の高いレーザー系の攻撃は非常に味方の被弾率が高く、そういった攻撃を連発してくる敵と遭遇するとサポート主体の仲間が2人は居ないと一瞬で壊滅してしまうことがありました。

一応本作は仲間が全員ダウンしなければゲームオーバーにならず、味方の蘇生は消費アイテム無しで行えて回数も無制限という仕様なので、あまりにも味方の生存率が高すぎると緊張感の無いゲームになってしまう為に、敢えてこの様な仕様にしているのかもしれませんが、前述の地形に引っかかる件も含めて見ると単純にAIの完成度が低いだけなのかなとも思いました。

この部分は別にゲームの進行に支障をきたす程では無いのですが、もう少し作り込んで欲しかったですね。

プレイヤーが実際に行動できるイベントが少ない

本作ではメインクエストとは特に関係のない会話イベントが発生することがあり、その内容は大会に出場する、ボスを倒したりダンジョンに潜入してレアアイテムを取りに行く、というものなのですが、その過程をプレイヤーがゲームとして体験することは出来ず、最初から最後まで全てテキストで表現されて何事もなく終わる事が殆どで、その描写には強い違和感を覚えました。

これは名作アクションゲームのグランド・セフト・オートで例えると、各ミッションの開始地点に入るとムービーが流れるだけでプレイヤーは一発の銃弾も撃てずに終了する様な物ですので、当然のことながら物語が進行しても全く達成感がありませんでした。

本作はビジュアルノベルではなくTPSアクションゲームなのですから、他の多くのゲームと同様にこういった会話イベントは全てプレイヤーが実際に行動出来るサブクエストにして欲しかったです。

UFGの有効距離が短く判定がシビア

本作にはUFGと言う主人公だけが使える武器があり、壁など撃ってゼルダの伝説シリーズのフックショットの様に撃ち込んだ場所まで高速で移動したり、一部の敵に撃つと即座にダウンさせることが出来るという中々強力な効果を持つ武器なのですが、実際に使用していると、その判定が中々シビアで使い辛く感じる時が多くありました。

UFGは通常の武器のようなオートエイム機能が付いておらず、武器自体の攻撃判定も小さい為、戦闘中には止まっている敵に対しても上手く当てることが中々できませんでした。

また壁や床を撃って移動手段として使う場合でも、UFG自体の有効射程距離は短く設定されている様で、地面や壁に当たったエフェクトが出ているのに移動できない時があり、敵との戦闘時の回避手段として使うには若干信頼性に欠ける部分がありました。

敵に対してはこれを使って動きを止めるより普通に銃で撃った方が早く倒せる場合が多く、戦闘が有利になる様な場面はあまり無かったので、良くも悪くも戦闘面ではあまり影響は無かったのですが、これを使った高速移動の方は結構爽快感があったので、出来れば届く範囲であれば必ず移動できる様にするなど、もう少し使いやすい性能にして貰いたかったですね。

ヒロインの一人であるツェリスカの掘り下げが浅い

本作には幼馴染であるクレハの他にゲーム内で出会うツェリスカというヒロインが居るのですが、このキャラクターの描写があまり多くない事に少し不満を覚えました。

本作のバッドエンドではクレハかツェリスカのどちらかが死亡してしまうのですが、その前に選択肢でどちらを助けるかを選ぶことが出来ます。

ですが最初から主人公と行動を共にしており、メインストーリーでも結構出番のあるクレハと比べて、ツェリスカの方はストーリーの後半辺りから仲間になり、その後のメインストーリーでの出番もそれほど多くはないので上手く感情移入が出来ない部分があり、ツェリスカをPTに加えて彼女の個別イベントを見ていないと殆どの方はクレハを助ける事を選ぶと思いました。

できれば個別イベントではなくメインストーリーでの出番や描写をもっと増やしてもらいたかったですね。

良いと感じた部分

原作に基づいて作られた世界観

SAOの設定を踏襲したオンラインゲームが舞台という事や弾道予測線の描写など、原作の世界観が反映されているゲームですので、これはSAOシリーズが好きな方にとっては喜ばしい部分かと思います。

人気作品が元になっている様な所謂キャラゲーは、ゲームによっては原作の設定などを殆ど無視している様な物もありますが、本作は3Dグラフィックで表現されるムービーやキャラクターのモデルなどのクオリティも高く、個々のキャラの描写にも違和感が無かったので、原作から大きく逸脱しないようにちゃんと考慮されている印象を受けました。

ハクスラ要素

本作では倒した敵から稀に武器やアクセサリーなどを入手することが可能で、強力な補正や効果を持ったアイテムで戦闘を有利に進めていくことが出来るという、ボーダーランズシリーズの様なハクスラ要素があります。

流石に本格的なハクスラゲームと比べてしまうとこちらは若干劣る部分もありますが、SAOの世界観でハクスラゲームが遊べる点で本作には唯一無二の価値があると思いますし、しっかりと厳選すれば補正効果を強化してある部分に特化した武器を作ったり、レアアイテムを掘ったりというハクスラならではの基本的な遊び方はちゃんと出来る様になっているので、特に原作を知らない方でもこういったタイプのゲームの1つとして楽しめる余地は十分にあると思います。

多様な武器や見た目が変わるアクセサリー

原作ではGGOには様々な武器があることが描写されていましたが、本作にもその設定はちゃんと活かされており、ハンドガンからロケットランチャー、光剣など、多くの種類の武器を使用することが可能です。

勿論それらの武器の性能や見た目は個々に違うので、豊富な選択肢の中から自分にあった武器を見つける為に試行錯誤したり、気分転換にいつもとは違う他の武器を使ったりといった楽しみ方が出来ます。

武器の種類が多い為、性能的には明らかに他の武器の下位互換的な武器も存在しますが、武器は強化によって性能を上げることが出来ますので、気に入った武器が若干弱めでもかなりしっかりと強化すれば敵の耐久力が上がる終盤でもそれなりに使い続けることも可能です。

また武器だけでなくアクセサリーや衣服の種類もそこそこ豊富で、装備できる衣服の中には下の画像のように原作キャラであるピトフーイと同じ衣装などもありますので、プレイヤーキャラの見た目や使用武器を原作キャラ同じにする、所謂なりきりプレイをする事も可能です。

また、衣服や武器などは特定の部位のカラーを変更することも出来ます。

本作のキャラゲーなのに主人公がオリジナルキャラと言う部分に引っかかりを覚える方でも、この使用できる武器の多さと多様な衣装によるなりきり(コスプレ)要素がある為、ある程度はその不満を払拭できるのではないかなと思いました。

まとめ

アクション ☆☆☆

操作性はそれほど悪くありませんが、スキルやガジェットはプレイヤーが完全に何もしていない状態でなければ発動しないと言う仕様には少し慣れが必要で、他の操作性が重視されている物と比べると少し違和感を感じました。

それほど精密な動作が要求されるゲームではありませんし、ミスをしても蘇生や回復手段が豊富に用意されていてすぐに状況を立て直す事ができるので、私個人は大したストレスにはなりませんでしたが、できれば他のTPSゲームの様にキビキビと動けるタイプの操作性にしてほしかったという思いは終盤まで変わりませんでした。

またプレイヤーができる事が限られている為、戦闘時の絵面に変化が乏しく単調になってしまいがちでしたので、できればボーダーランズの各キャラ固有のスキルの様な、なにか大技的なものが用意されていればもっと楽しめたのではないかなと思いました。

ストーリー ☆☆☆

後半の真相が明らかになる展開は若干駆け足気味に感じる部分がありましたし、続編を意識している為か本作のメインストーリーでは黒幕は完全に倒すことが出来ず逃げられてしまって決着が付かず知り切れトンボ感を感じる部分はありましたが、全体を通して見るとその流れ自体は強く違和感を感じるほどの物ではありませんでしたし、原作とは無関係な外伝作品のシナリオとしては十分な物に感じました。

個人的にはプレイヤーが参加できるサブクエストなどのストーリーをもっと用意して欲しかったのですが、その辺りはDLCがありますので、本作が気に入った方はこちらを購入しても良いと思います。

音楽 ☆☆

OPやEDで使用される楽曲は素晴らしいのですが、ゲームプレイ中のBGMにはそれほど印象的な物が無く、プレイヤーの移動できる場所があまり多くない為に同じ曲をずっと聴く事になって変化に乏しく感じる時がありましたので、できればもう少しバリエーションが欲しかった所です。

BGM以外の不満点では街中でアファシスが同じ部屋に居る際の独り言が何度も繰り返されるので少し耳障りだったり、銃の射撃時やヒット時の効果音の迫力があまりなかったりといった点がありましたので、この辺りをもう少し配慮して欲しかったと思いました。

品質 ☆☆☆☆

味方のAIの挙動などに若干不満点はありますが、それ以外の部分では特に大きなバグは見かけませんでした。

原作キャラの3Dモデルやそれを使ったムービーも良く出来ていましたし、銃の見た目やスキルのエフェクトなどもSAO世界のオンラインゲームらしい表現が取り込まれていて、しっかりと細部にこだわって作られていると思います。

総評点数 60/100点

キャラゲーとしてはかなり良いクオリティになっていますので原作のファンにとっては十分に楽しめる出来だと思いますが、単純にTPSゲームとしてみると全体的に戦闘面での派手さや変化が乏しく、ストーリーやキャラクターに思い入れが無い方からしてみるとクリアするまでの道中でダレてきてしまう部分があるように感じました。

ゲームの進め方も大雑把に見るとほぼ同じ様な構造のダンジョンに入って敵を倒す事の繰り返しで、ゲームとしてプレイヤーが体験できる形での特徴的なボスとの戦闘や登場の際の演出などもあまり無い為に、自分で色々な武器を使ってみたり、様々なスキルを試してみると言った事をしないと退屈に感じてしまう方も居るのではないかなと思います。

戦闘面で大きな代わり映えがしないというのはある意味オンラインゲームっぽくはあるのですが、それを受け入れられるか否かで本作の評価は結構変わってくるかと思われます。

ただ多くのキャラクターやスキル、武器やレアアイテムなどが用意されているので、やり込む余地は十分にあり、予想以上にじっくりと長く遊べるゲームでもあったので、洋ゲーとはまた異なったタイプのTPS作品を遊びたいと言う方にとっては、原作を知らない方にもオススメできると思います。

SAO原作ファンの方や、少し変わったTPSゲームをやりたいという方は是非遊んでみて下さい。

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