【ゲーム批評】革命を起こし支配されたアメリカの開放を目指せ!「Homefront: The Revolution」批評

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今回は、FPSゲームの「Homefront: The Revolution」のキャンペーンモードをクリアしましたので、その感想を書いていきたいと思います。

内容はストーリーのネタバレを含みますので、未プレイの方はご注意ください。

概要

本作は北朝鮮の科学技術力がSF的なレベルまで超発達した世界線を描いたパラレルワールド物で、ストーリーではその技術力に依存した結果として経済破綻し、北朝鮮(本作ではKPAと呼ばれる組織)に支配されてしまったアメリカで、レジスタンスとして戦う主人公たちの奮闘が描かれます。

これに似たようなストーリーを持つ作品はWolfensteinシリーズやBioshockシリーズなどが有名どころで、FPS作品の金字塔的な存在でもあるHalfLife 2にも似たような描写があり、FPSというジャンルにとって独裁者によるディストピアは非常に相性の良い題材なのかもしれません。

武器と装備品

本作ではハンドガンやアサルトライフル、クロスボウやRPGなど、多数の武器を支配地域に設置されている武器庫兼ショップである「ガンスミス・ロッカー」から購入して使用する事が出来ます。

爆弾やハッキングツールなどの一部の武器は、購入するにはメインクエストの進行が必要です。

お金は倒した敵から拾う、ガラクタを売却する、クエストを進行する、などの行動で獲得する事が出来ます。

武器は購入するだけでなく、料金を支払って2段階まで強化する事が出来たり、後述する街の開放で獲得できるギアポイントを利用して武器のアタッチメントを購入する事で、性能を向上させたりハンドガンをサブマシンガンの様な別の武器に改造して使用する事も可能です。

また、敵から受けるダメージが半減したりリロード速度が早くなるなど、様々な効果を持つ装備品を購入する事も可能になっており、本作にはレベルアップの様な概念が存在しないため、実質これらの買い物要素がプレイヤーの強化要素となっています。

本作は購入した全ての武器を一度に所持出来るわけではなく、サブ武器1つとメイン武器2つしか持ち歩く事ができない仕様となっており、所持武器の変更もガンスミス・ロッカーで行います。

戦闘

基本的に戦闘システムは一般的なFPSゲームとほぼ代わりませんが、体力の自動回復が非常に遅く、減った体力を即座に回復させるにはヘルスキットを使用する必要があります。

ヘルスキットはお金で購入したり倒した敵や街中にあるレジスタンス拠点や保管庫から拾う事で入手できます。

 

武器の弾薬は倒した敵から拾う事で十分な数を取得できる為、こまめに敵から拾うようにしておけば弾切れになる事はまずありません。

しかし、RPGの様な一部の強力な武器の弾薬は、特定の場所でしか入手する事が出来ないようになっています。

また、ガンスミス・ロッカーを使用する際には自動的に全ての武器の弾薬が補充されます。

本作に出現する敵は遠距離から狙撃を狙ってくる者や、接近戦を仕掛けてくる者、軽戦車の様なドローンなど複数の種類が存在し一部の敵には弱点が用意されており、そこを狙う事で戦闘を素早く終わらせる事が可能です。

 

また、空中を浮遊しサーチライトでこちらを見つけてくる巨大戦艦は、攻撃するとヒットマーカーは表示されるものの恐らく無敵であり、RPGを何発叩き込んでも倒すことは出来ませんでした。

もし戦闘で体力が0になり死亡した場合は、直前のチェックポイントか制圧済みの最寄りの拠点からリスタートされます。

街の開放

本作のストーリーは決まったステージをクリアしていく様な物ではなく、支配された街を舞台にしたオープンワールドの中でストーリーが展開されていく形式となっており、主人公達レジスタンスは支配されたアメリカを開放する為の存在として、本編であるメインクエストとは別に街の各施設を開放していく要素がサブクエストとして用意されています。

敵に占領されている街中では敵の兵士やドローン、監視カメラなどが配置されており、レジスタンスである主人公が一定時間これらの敵の視界に入るか、あるいは街中で破壊工作を行っている姿を発見されると警戒状態となり、警戒が解かれるまで無限湧きする敵に追いかけ回される事になります。

敵が警戒状態に入ると画面左下に赤い警戒ゲージが表示され、警戒状態はこれが完全に0になるまで続きます。

警戒ゲージは敵の視界から逃れる事でゲージは減少し始め、敵の追跡はゴミ箱などの隠れ場所に入る事で振り切る事が出来、外に出ている状態よりも素早く警戒ゲージを減少させる事が可能です。

敵に制圧されているエリアはマップで赤色で染まっており、開放したエリアは青色で染まります。

エリアを開放すれば味方のレジスタンスが徘徊するようになり、完全に敵が居なくなる事はありませんがその地域での活動がしやすくなります。

制圧されているエリアを開放する為には、それぞれのエリアに存在する敵の拠点を制圧する必要があります。

敵の拠点には要塞や無人の施設など幾つかの種類があり、それぞれに指定されている特定の条件を達成する事で制圧が完了します。

一部の拠点では侵入する為にラジコン爆弾やハッキングツールが必要になったり、隠されている特定のアイテムを集めなければならないなど、その制圧条件に少しパズル要素が含まれている物も存在します。

悪いと感じた部分

少しバグや不具合が残っている

本作の敵や味方レジスタンスなどを制御するAIは基本的な動作には余り問題はありませんが、時折良くわからない行動を取る時がありました。

例えば占領した基地などには味方のレジスタンスによる焚き火が設置されるのですが、基地の警備をしている味方のレジスタンスが急に自らその焚き火に突っ込んで火だるまになったり、敵は敵で直ぐ側の物陰に逃げ込んだ自分の場所に来るまで妙に関係ない場所をウロウロして時間が掛かったりと、地形に対しての認識に問題があるように感じます。

この事を特に感じたのが味方の戦車と共に敵の装置を破壊するメインクエストのシーンで、戦争により地面が凸凹になっている街が舞台という事もあったのでしょうが、戦車が先に進む自分に上手く追従してくれず、結局は殆ど戦車の助けを借りずに自分一人で敵の装置を破壊して回る事になりました。

これらのAIの挙動はゲームの進行自体には影響しませんでしたが、本作は世界観も重要な作品ですのでこうしたAIの動きの不自然さは気になりましたね。

また、本作は公式で日本語に対応してくれており、その殆どの内容は問題ないのですが、時折女性の声なのに字幕の一人称に「俺」が使われていたり、日本語音声の処理が上手く出来ていないのか、一部のシーンで急に今まで英語を喋っていた登場キャラクターの音声が急に日本語になったりするなど、少しチェックが足りていない様に感じました。

こうしたチェック漏れと思われる部分は他にもあり、例えば本作のメインストーリーの途中で戦車が破壊され、それに巻き込まれて行動を共にしていた仲間のメカニックが死亡してしまうシーンがあるのですが、その後でメカニックが使っていたガレージに入ると、何故かメカニックとその整備スタッフのモデルがまだ残っており、もう存在しない戦車を整備する動作をしているという、結構シュールなバグもあります。

そして自分が遭遇した物で最も酷かったバグが、画面が真っ暗になってHUD以外何も見えなくなるという物でした。

こちらのバグは敵との戦闘中にいきなり発生した為、その発生条件などは良く分かりませんが、チェックポイントからやり直したり、少し前のセーブデータをロードしても改善せず、かなり焦りました。

幸いゲーム自体を再起動する事でこの問題は改善しましたが、バグ取りが難しいオープンワールド系のゲームという事を考慮しても、目立つバグはもう少し取り除いた方が良かったのではないかなと思います。

本作にこうしたバグが多い背景には、どうやら制作会社のトラブルがあった事が、スタッフロール冒頭の文章から伺えます。

この文章では、本作を開発している際に元々のパブリッシャーとの関係の変化や、開発スタジオの所有者の変更などがあったという内容が記されています。

また、開発するゲームの規模や複雑さに対して開発チームの規模が小さかった、という記述もあり、これらの理由で本作の開発はかなり難航していた様です。

良いと感じた部分

支配されたアメリカの世界観を表現したマップ

ディストピア物は世界観が重要ですが、本作はマップがかなり作り込まれており、ディストピア作品の世界観が良く構成されています。

本作のグラフィックはそれ程高品質というわけではありませんが、それでもスラム化して荒廃した街並みや、そうした街並みに無理やり設置されたであろう敵の施設の異質さなどはとても巧みに表現されており、支配された街並みの鬱々とした雰囲気を感じる事ができました。

また、市民は敵兵士に尋問や暴行を日常的に受けており、主人公はそれを助ける事で市民の革命感情を高める事が出来たり、地区で市民による暴動を発生させた際には、逆に市民が敵兵士に襲いかかり、シュプレヒコールを挙げている姿が描かれるなど、本作のストーリーに沿った要素がマップに反映されている為、ゲームプレイを通して自然とディストピア物としての世界観を体験する事が出来るようになっている点が良かったです。

 

ストーリーでは様々な地区を移動する事になりますが、コピー&ペーストで作った様な変化の乏しい物ではなくどの地区も何らかの特徴があるマップになっている上に、外見だけを見繕っているのではなくちゃんと中に入れる建物も多数あり、これはオープンワールド作品の中でも結構珍しいくらい良く作り込まれているマップではないかなと思いました。

見どころのあるストーリー

本作の主人公達は既に支配された国で抵抗するレジスタンスという立場であり、基本的に劣勢な状況にあります。

また、彼らの「アメリカの開放」という目的もトントン拍子に上手くいく、というものではありません。

寧ろ、目的を達成したと思ったらすぐに敵の大規模な反撃を受けたり、内部のメンバー間で方針の違いで揉めたり、信じていた人物に裏切られたりと、波乱万丈かつ時には仲間を失い絶望的な状況に追い込まれる事もありました。

ですが、その度になんとか再び反抗の作戦を立て、主人公の能力に若干依存度が高い様な部分もありますが作戦を達成し、諦めずに行動していきます

そうしたストーリーの流れは、主人公が無双してあっさり敵を倒してしまう様な物とはまた異なる緊張感があり、物語への没入感を高めている様に感じました。

更にストーリーがある程度進行するごとに差し込まれるイベントシーンのクオリティが中々に高く、大作FPSであるCoDシリーズにも劣らない様なドラマ感のある場面は見どころがあります。

特に本作のイベントシーンでは光と影を用いた演出が多様されており、これが緊張感や臨場感を増す効果として非常に良い効果を出している印象を受けました。

本作のFPSゲームとしての戦闘はつまらないわけではありませんが、基本的には街の施設の占領という最初から最後まで似たような事を繰り返すので、若干物足りなさを感じる部分がありますが、そんな戦闘の繰り返しでも自分が本作を最後までプレイする事が出来たのは、本作におけるストーリーの見せ方が非常に良かった点が大きかったです。

まとめ

ストーリー ☆☆☆☆

オープンワールドを取り入れている作品のストーリーはプレイヤーの自由度が高くサブクエストなども存在している為、時には淡々としていたり存在感の薄い物になってしまっている場合もありますが、本作では迫力のあるシーンや先が気になる展開などのお陰で、メインストーリーを最後まで楽しむ事ができて良かったです。

FPSは一人称視点という事で他の三人称視点のRPGやアクションゲームなどとはまた異なった臨場感でストーリーを体験できるジャンルですが、本作はその強みを活かしてしっかりと中身のある物語と映像を作ってくれており、そのクオリティが有名タイトルと比べても遜色ない程の出来であった為、良い意味で期待を裏切られました。

本作のストーリーは完全にアメリカを取り戻す所までは行かず一つの地域の制空権を確保した所で終わるという、所謂「俺達の戦いはこれから」的なエンディングであり、少し中途半端さを感じる部分もありましたが、それでも全体的に話はまとまっていてとても出来が良かった様に思います。

アクション ☆☆☆

使える武器の数はそこそこありますし、FPSゲームとして敵を狙って倒す基本的な部分の面白さも感じられましたが、実際に出来る事の幅があまりなく、後半になるにつれて徐々に単調さが目立ってくる様に感じました。

敵に制圧されている施設や敵の基地などを制圧する要素は最初は面白いのですが、何度も続けていくと殆ど作業の様な状態になってしまい、たまにあるパズル的な制圧条件のある物を除けば変化に乏しいのが気になりました。

定期的にボスキャラでも出てきてくれればまた違った印象を持てたと思いますが、本作で戦える敵は殆どが街中にも出てくる様な敵ばかりで、各シーン特有の巨大兵器や敵側の主要人物の様な印象に残る敵が少なかったのも、本作の戦闘が単調に感じられた理由の一つです。

また、本作のディストピア物というコンセプトを反映したゲームシステムである街中で敵に見つかってはいけないというステルス要素も、敵から隠れたり逃げるのが簡単過ぎて、ステルスなど考えずにゴリ押しした方が楽な為に存在感が薄く、これも残念な部分でした。

更に、敵から銃弾やアイテムなどを得る際には死体に向かって視点を合わせ取得キーを長押ししなければならず、敵との戦闘の最中では中々やり辛い仕様になっていたり、自動回復が非常に遅く回復アイテムが必須にも関わらず、前述の拠点などにある「ガンスミス・ロッカー」では銃弾は補充できても回復アイテムは補充できず購入するか街中で拾う必要があるなど、仕様の面でも面倒な部分が多かった様に感じました。

音楽 ☆☆☆☆

音楽自体のクオリティが高く、マップや状況に適した物が複数用意されており、本作の没入感を高める事に貢献してくれています。

音量を調整するシステムが効果的に働いている為か、戦闘中や街の探索時などではBGMの音量が大きくなる事で緊迫感や臨場感などを向上させると同時に、BGMの存在感をしっかりと感じさせてくれる物になっている印象を受けました。

品質 ☆☆

前述した様なAIの動作やキャラクターの管理などのテストが不十分に思える部分があり、画面が真っ暗になるような明らかなバグが発生するなど、テストが十分に行われているとは思えない部分がありました。

本作はマップの構造やゲーム内で遊べるミニゲームなど、非常に作り込まれている部分がある一方でこうしたバグが残っている点には違和感がありましたが、その背景には前述のパブリッシャーや開発体制のトラブルなどの影響があったのだと思われます。

 

総評 65/100点

Steamでの本作のメタスコアは54点となっており、これは評価が甘めと言われるSteamの中でも結構悪い数字ですが、実際に自分がプレイした感覚ではそれ程に酷い作品であるとは思いませんでした。

どうやらこのメタスコアが付けられたのは本作の発売当初との事で、その時点では現在以上に多くのバグや難易度の調整不足など、様々な問題があったらしく、そうした部分からも前述のスタッフロール冒頭に記されている開発側の苦悩を感じます。

もし本作が万全の体制で開発されていれば、恐らくもっと良い作品になってくれていたと思うので非常に残念です。

Homefrontシリーズ自体も2016年5月に発売された本作を最後に音沙汰がなくなっており、本作で描かれたストーリーも中途半端な所で終わってしまっているので、いつか続編が作られてくれる事を期待したいですね。

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