今回はEpic Games Launcherで無料で配布されていたAxiom Vergeをクリアしましたのでその批評です。
内容はネタバレを含んでおりますのでご注意下さい。
概要
このAxiom Vergeはドット絵で表現された2Dの世界を探索していくという所謂メトロイドヴァニア系の作品となっております。
主人公である科学者のトレースは、実験中の事故に巻き込まれ、気がつくと不気味な異世界に迷い込んでいたという所からゲームがスタートします。
彼の目的はこの異世界で生き残り、元の世界へ戻る方法を探すことと、この世界で彼に助けを求めてくる謎の存在の真相を探る事です。
タイトルであるAxiom Vergeは、Axiomが「公理」、Vergeが「縁、端っこ、へり、限度、限界」という意味を持っていますから、直訳すると「公理の限界」という意味になりますが、これは最も進んだ世界という意味なのかもしれません。
或いは主人公が科学者であるという設定を考えれば、何かを証明することができない、もしくは証明する一歩手前、というような意味としても捉えられるかもしれませんね。
Axiom Vergeのゲーム性
ゲーム性としましては、他のメトロイドヴァニア系のゲーム同様、部屋から部屋へ探索を行い、アイテムなどをゲットして、それまでジャンプの飛距離が足りずに通行できなかった場所などに行くことができるようになったり、通れなかった場所が通れる様になるという事を繰り返して、最終的にラスボスの元へ辿り着くという類の物です。
操作性は武器の切り替えと、斜め方向へのダッシュ移動に若干癖がある事以外には特に問題は無く、斜め上や斜め下方向へ正確な攻撃ができるように、キャラクターの立ち位置がその場に固定される操作があるなど、細かな部分にも配慮して作られていると言えるでしょう。
主人公の攻撃は基本的に異世界で拾える銃を使った飛び道具で、銃にはそれぞれ壁を貫通するか否かや、飛距離、ダメージ、エフェクトなどの違いがあります。
そしてこれらの多様な武器の中でも特徴的な物が、ナムコの有名なアクションゲームであるミスタードリラーのように、特定の壁を破壊することが出来るドリルで、これを使用して主人公が壁を砕きながら突き進む姿はとてもユニークです。
セーブは特定のエリアで行う事が可能で、このエリアがプレイヤーが死んだ際のリスポンポイントにもなっております。
死んでもすぐにここで復活してやり直せる為にストレスは少なく、マップで迷う事が無ければ割とサクサクゲームを進めていくことができるでしょう。
悪いと思った部分
後半の敵の火力と体力が結構理不尽
ゲームが後半になるに連れて、そのエリアに出現する敵の硬さと火力が徐々に高くなっていくのは、ほぼどのようなゲームでも見られる傾向ですが、このAxiom Vergeのそれには少しばかり理不尽さを感じる部分がありました。
敵全体的に一直線にこちらに向かって突進してくる為、その習性を利用して地形に引っ掛けて、壁を貫通する武器で一方的に攻撃すると言った方法で対処することは可能ですし、特定の敵には後述するアドレス攪乱機の電波を当てる事でほぼ完全に無力化することができたり、何ならシークレットアイテムには武器の威力を上げる物まで存在するなど、救済措置もしっかりと残されていますが、ワンミスでのダメージが非常に高く、その攻撃の回避も難しい敵が出てきた際には少しストレスを感じる部分がありました。
簡単過ぎるゲームは流石に歯ごたえが無くてつまらなく感じてしまう事もありますが、敵の火力を上げて硬くするという単純な方法での難易度上昇は、単純であるからこそもう少しマイルドな調整を行ってもらいたかったです。
少しボリューム不足
本作品は個人制作ですので、その事を考慮すればこの点は仕方がない部分もありますが、やはり他のメトロイドヴァニア系の作品に比べると、全体のボリュームが少ないように感じました。
私は初見プレイでは8時間程度でエンディングまで辿り着きましたが、もしシークレットアイテムなどを全て集めたとしても、アクションゲームに慣れている方であれば10~12時間程度でクリアできると思います。
良いと思った部分
凝った演出
このゲームは淡々と物語が進んでいくだけではなく、猜疑心を向けられた主人公が味方に攻撃されたりと、凝った演出が行われるシーンが多数存在しています。
それらのシーンにリアリティを持たせているのが、良い意味で不気味なドット絵で表現された異世界で、その雰囲気が醸し出す得体の知れなさがキャラクター達の行動を自然な物に仕立てています。
これらの演出が異世界を探索している合間合間にタイミングよく盛り込まれているので、探索によって淡々とプレイしてしまいがちなメトロイドヴァニア系のゲームにも関わらず、プレイヤーにその背景のストーリーの存在感を強く意識させることができており、早く先の展開を見たいが為に夢中でゲームをプレイすることができました。
他にこういった演出のある作品には洞窟物語などがありますが、やはりストーリーがしっかりしているゲームは最後まで飽きる事がありませんね。
ドット絵、音楽などのクオリティの高さ
このゲームのドット絵は非常にクオリティが高く、異世界の不気味さや機械の無機質さなどが上手く表現されております。
中でもボスキャラのデザインは素晴らしく、そのグロテクスな外見は作品の雰囲気と見事にマッチしており、迫力のある戦闘シーンを演出できている大きな要因の一つです。
また、音楽も耳に残るような印象的なメロディになっており、異世界の描写をより際立たせる事が出来ています。
現代の技術を取り入れたレトロゲーム
2Dのレトロ風なゲームとして作られている本作品ですが、それに使用されている技術までがレトロというわけでは無く、例えば敵が倒される際にはドット絵の爆発エフェクトのみを表示するのではなく、敵のドット絵そのものをバラバラにしたり、一部の武器では弾がドット絵ではなく現代風のエフェクトが用いられるなど、レトロ風なドット絵での表現と、現代風のエフェクトを用いた表現を融合させた独特なゲームとなっております。
これらの技術がゲームの表現の幅を広げており、敵を倒した際の爽快感や、特殊なエフェクトがドット絵の世界に現れるユニークな部分などで、より楽しくプレイすることが出来ました。
バグのような演出
このゲームでは一見バグに見えるような部分を用いて、プレイヤーの移動を阻害している壁を表現していたりします。
例えばこの下の画像では、左側のトンネルの右下に、紫色のごちゃごちゃとした何だかよくわからないブロックが道を塞いでいますが、これがまさにバグを表現した部分です。
画像ではわかりませんが、この部分は常にグラフィックの表示がバグったような挙動を取っています。
これらの部分は後々「アドレス撹乱機」という当て続けることで敵をバグらせて弱体化したり、逆にバグっている(ように見える)場所に当てて通常のブロックに戻したりできる武器が手に入るので、それを使用して通過することになるのですが、このような世界観の奇妙さはメトロイドヴァニアのゲームでは中々珍しい演出で、非常に面白かったです。
まとめ
アクション ☆☆☆☆
ゲーム中盤であるアイテムを入手することで使用することが出来るようになるダッシュが、移動キーの二度押しで発動する仕様なので時々誤爆してしまう事がある点が少し気になるものの、全体的な2Dアクションゲームの操作性としては快適な類であると言えるでしょう。
メトロイドヴァニア系のゲームは操作性の良い物が多いですが、このゲームも操作性の部分をしっかりと作り込んでいるように感じました。
また、ドリルやアドレス撹乱機という特殊な物を含めた様々な武器があるのでプレイヤーができることが多く、マップの探索をより面白いものにしてくれています。
ストーリー ☆☆☆☆
ゴールを目指すだけの単調なゲームではなく、巧みな演出によってプレイヤーにしっかりと世界観やストーリーを意識させることに成功している作品だと思います。
プレイヤーがストーリーでの会話シーンや異世界の描写、シークレットアイテムなどから得られる情報は断片的で、明確に何が起きたのかまでは知ることが出来ませんが、この敢えて謎を残す手法もプレイヤーが世界を探索するメトロイドヴァニアのゲーム性と非常に合っており、評価できる点の一つです。
アイテムやマップの収集率によって真エンディングが開放されるのも良い点でした。
続編が予定されている為か、最後の展開は少しばかり唐突感は否めませんが、次回作ではどのような物語が待っているのか楽しみです。
音楽 ☆☆☆☆
耳に残りやすいフレーズや音を用いているので、普通のゲームで使用される物と比べると自己主張の強いタイプのBGMではあると思いますが、耳障りということは全く無く、寧ろその独特な音楽が異世界のおどろおどろしい雰囲気を更に引き立てていて非常に良かったです。
品質 ☆☆☆☆☆
私がプレイした範囲では目立ったバグもなく、敵の妙な挙動もありませんでしたので、しっかりとしたデバッグが行われているものと思われます。
総評点数 85/100点
謎だらけの世界を探索する楽しさと、それに負けないアクションのクオリティの高さに加え、BGMやドット絵の完成度も高く、文句無くオススメできるゲームの一つです。
更にこれだけの大作をたった一人で5年も掛けて制作したと言うのですから、作者のその並々ならぬ情熱には本当に驚かされます。
なんだか本作を無料で入手したことを少し申し訳なく思っちゃいますね。
この作品は間違いなく彼の代表作となるでしょうし、今後もこのような素晴らしい作品を生み出してくれる事を期待したいです!
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