【ゲーム批評】時代を先取りしていた人気シリーズの第一作目:ロックマンエグゼ1

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今回は初代ロックマンエグゼをクリアしましたので、その感想を書いていきたいと思います。

内容は作品のネタバレを含む為、未プレイの方はご注意下さい。

概要

本作ロックマンエグゼは2001年3月にカプコンからゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売されたゲームで、ストーリーはインターネット技術が発展し、ナビという人格を持ったプログラムが一般的に用いられる様になった近未来を舞台に、小学生である光熱斗とそのナビであるロックマンが、世界の破壊を目論む組織WWWによる犯罪に立ち向かっていく、というSF物になっています。

この作品が発売された2001年当時は、徐々にIT技術が利用される様になっていったものの、まだまだインターネット環境が今ほど便利で気軽に使える状態ではないような状況でしたが、現在の様にインターネットが人々の生活に密接に関わる時代を描いたストーリーや、その特徴的な戦闘システムなど、2023年の現在から考えるとかなり時代を先取りしていた作品でした。

自分がプレイしたのは2023年4月にSteamで発売された各ロックマンエグゼシリーズの詰め合わせ作品「ロックマンエグゼ アドバンスドコレクションVol1」に収録されているバージョンなので、本家のゲームボーイアドバンス版とはシステムが異なる点がありますが、基本的な部分はゲームボーイアドバンス版と変わらず、モニターの大画面でのプレイが可能になっています。

特徴

ロックマンシリーズは横スクロールアクションゲームの王道的な作品ですが、このロックマンエグゼでの戦闘はRPGの様にエンカウント制で、戦闘が始まるとロックマンはマス目で区切られたステージに移動し、常時使えるロックバスターと一定時間ごとに使える「チップ」という特殊能力が使えるアイテムを駆使して戦うという、通常のロックマンシリーズとは大きく異なるゲーム性になっています。

ロックバスターの威力は低い為、効率良く敵を倒すにはチップによる攻撃がほぼ不可欠です。

チップの種類は大きく分けて攻撃・回復・補助・ナビの4つで、それぞれを状況に応じて使い分ける事で戦闘を有利に進められます。

戦闘の舞台となるマス目はチップによる効果で自身が移動可能なマス目を増やしたり、マス目自体を破壊して一定時間利用できない状態にする事などが可能で、これを用いて敵の移動や攻撃を制限することで敵を動けなくする所謂ハメ状態を作り出し、一方的に攻撃する事も可能です。

また、このゲームでは戦闘によって得られるのはチップとお金であるゼニーのみで、経験値などは得られない為、何度雑魚との戦闘を繰り返してもそれによってロックマンの基礎ステータスが上昇する事ありません。

ロックバスターの性能やロックマン自身の防御力などの基礎ステータスを強化するには、専用のアイテムを商人から購入したり、特定の条件を満たして入手する必要があります。

悪いと感じた部分

エンカウント率が高い

本作はRPGゲームの様に、主人公がネット空間を移動していると敵とエンカウントして戦闘が始まる様になっているのですが、このエンカウント率が非常に高く、一度戦闘が終わってから大体数秒移動するとすぐにまた別の敵とエンカウントします。

本作の戦闘は一般的なRPGの様に、経験値が溜まってキャラクターが成長し、最終的には殆どの敵を一撃で倒せる様にはならない為、一度の戦闘に掛かる時間は強力なチップを用いてもそこまで短縮出来ません。

その為、戦闘システム自体は面白いのですが、中盤辺りから耐久力や攻撃力の高い敵が出現する様になると、エンカウント率の高さと戦闘時間の長さで中々ストーリーが進められず、少しうんざりしてしまう場面もありました。

ですが、本作はそうしたプレイヤーからの不満を開発も理解しているのか、「Buster MAX Mode」という、ONにする事でロックバスターの威力が100倍になるゲームボーイアドバンス版には無かった設定が追加されており、これを使えば一瞬で敵を倒せる様になる為、戦闘が長過ぎる問題を解決する事が可能になっています。

ただ、できればエンカウント率自体に調整を加えて、もう少しスムーズにゲームを進められる様にしてくれていれば更に良かったですね。

謎解きに時間が掛かる

本作は各ダンジョンごとに先に進む為に解かなければいけない謎解きが用意されているのですが、この謎解きの殆どが総当りで解決方法を探さなければならず、多くの時間が掛かる物であった点が気になりました。

本作の謎解きは失敗すると来た道を一旦戻らなければならないのですが、その際に上記のエンカウント率が高い問題によって敵と頻繁に戦闘が発生し、更に本作の戦闘は敵を効率よく倒す為に適切なチップを選ばなければならない若干のパズル的な要素が含まれるので、謎解き中はまるで神経衰弱ゲームをしている最中に定期的にちょっとしたパズルを解かされる様な感じになって結構めんどくさく感じました。

できれば謎解きパートと戦闘パートは分けて、どちらかに集中出来る様にして欲しかったですね。

色々とプレイヤーに不親切な部分がある

本作は重要な情報がプレイヤーに伝わりにくく、少し不親切な部分があるように感じました。

例えばストーリーを進める為に特定の人物を探さなければならない場合があるのですが、その際にヒントが殆ど与えられず、何処に行けば良いのかが分かりづらい場面が一部ありました。

また、本作は後半になると雑魚敵であってもその攻撃力や体力が大幅に上がる為、戦闘を楽に行うには敵から受けるダメージを軽減するアーマー系のアイテムが必要なのですが、そのアイテムを販売している商人の位置が迷路のようなネット空間上であり、更にネット空間では自分がどの位置に居るかが分かるマップも無い為、攻略サイトなどを閲覧しない場合はアーマー系のアイテムを入手する方法が分かりづらく感じました。

他にもオートセーブ機能が無く、敵に倒されるとタイトル画面に戻されて最後にセーブした場所からやり直さなければならないなど、昔のゲームにはよくありましたが現在から考えると少し不親切に感じる部分もありました。

良いと感じた部分

画期的な戦闘システム

本作のマス目で区切られたステージ上で、一定時間ごとに選出されるチップの能力を使って戦闘を行うというシステムは、後にOne Step From Edenの様なほぼ同じ戦闘システムを採用したフォロワー作品が登場して好評を得るなど、現代でも通用する程に完成度が高く、RPGの様なターン制バトル要素とアクションゲーム要素を上手く融合させた非常に画期的なシステムで、2001年の段階でこれを生み出したカプコンの発想力とゲーム制作に関する能力の高さを感じました。

また、この様な一見複雑でありながら、本作はギリギリの戦いを強いられるものの、ちゃんと戦略を練れば優位に立てるという敵を攻略する喜びを感じられる丁度よい塩梅の難易度に調整されており、この画期的な戦闘システムが単なる思いつきを実装しただけの物ではなく、しっかりと細かな部分まで考慮して作られている印象を受けました。

また、戦闘で使用するチップには敵の能力をそのまま使える物が幾つか存在し、ロックマンシリーズらしい倒した敵の能力を自分が使える要素も十分に楽しむことが出来ます。

完成度の高い世界観

本作はPETという現代で言う所のスマートフォンの様な携帯デバイスと、ナビという人間の様な感情を持つAIが存在するなど、IT技術が高度に発展している近未来SF的な世界が舞台となっており、この世界観の完成度の高さも魅力的な要素でした。

近未来を描いた作品には車が空を飛んでいたり、建造物の形が独特なものになっていたりと、現実世界との差異が大きな作品もありますが、本作の世界観はPETやナビの存在を除けば、学校があり、電車が走り、役所があるなど、その見た目の殆どが現実世界の社会構造と変わりません。

本作の世界観は現実世界の延長線上的な物となっている為、ストーリーが専門用語だらけで分かりづらくなるような事も無く、プレイヤーが没入感を得る事に繋がっている様に感じました。

また、その世界観を表すドット絵のクオリティも非常に高く、マップを探索する楽しさや、新しい敵と出会う喜びを十分に感じられるものになっていると思います。

まとめ

ストーリー ☆☆☆☆

主人公とロックマンがWWWの起こすテロに立ち向かい、解決していくストーリーは面白いと同時に分かりやすく、勧善懲悪の王道物として違和感無く遊ぶ事が出来るものになっていると思います。

事件の発生→解決に動く→ピンチになる→助けが来て一件落着、という物語全体の起承転結もしっかり用意されており、最後まで飽きること無くゲームをプレイできました。

不満点はボリュームが若干少なく感じることですが、これは本作がゲームボーイアドバンス専用ソフトとして作られた事を考えると容量的に仕方がない事かなとも思います。

アクション ☆☆☆☆☆

本作の独特かつ画期的な戦闘システムによるアクション性は、他のゲームでは体験出来ない様な楽しさを感じる事ができました。

移動できる場所がマス目に限られている点も最初こそ少し不自由に感じる事もありましたが、敵との戦闘ではちゃんと普通のアクションゲームの様に相手の攻撃を躱して自分の攻撃を当てる駆け引きが成立しており、その中でチップによる地形への干渉によって戦闘を有利にしていく事が出来るなど、操作に慣れれば寧ろ戦闘の自由度を高めている要素であると思いました。

音楽 ☆☆☆☆

本作は昔の携帯機向け作品という事もあり、キャラクターボイスは存在しませんが、その代わり効果音が豊富で、現在のリアル系のゲームではまず聞くことが無くなった非常にゲームらしい効果音は、その軽快な音でゲームに爽快感や臨場感を与えてくれていました。

また、BGMに関しても数はそれほど多くありませんが、場面に適した物が選ばれており違和感を感じる事はありませんでした。

品質 ☆☆☆

ゲームの動作がフリーズしたり、進行度が巻き戻ってしまう様な致命的なバグは無く、キャラクターの挙動に関してもおかしな部分は見当たりませんでしたが、ストーリーを進める際のヒントの分かりにくさや、マップが無かったりオートセーブが無い点、更にキャラクター強化方法への動線の乏しさなど、幾つか不親切な点が目立ちました。

ですが、オリジナルのゲームボーイアドバンス版と異なる本作では、プレイヤーの救済措置としての「Buster MAX Mode」が存在する為、殆どの問題をこれで解決する事は可能になっております。

総評 80/100点

幾つかの不満点はありましたが、シリーズの初代作品とは思えない程に完成度が全体的に高く、プレイした人が十分満足できる作品になっていると感じました。

当時ゲームボーイアドバンス版をプレイしてリタイアしてしまった方も、救済措置のお陰で最後まで作品を楽しむ事が出来るようになっている為、気になる方は購入を検討してみては如何でしょうか。

本作の他にロックマンエグゼ3までの4作品が収録されているロックマンエグゼ アドバンスドコレクション Vol.1は、2023年5月現在Steamにて3990円で販売されております。

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