【ゲーム批評】Quantum Break 批評

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今回はSteamやXbox Oneで遊べるTPSゲーム「Quantum Break」の批評です。

内容はストーリーのネタバレを含みますので未プレイの方はご注意下さい。

垂直同期について

本作では画面のチラツキを抑える為にFPSの値を一定に保つ「垂直同期」が最初から有効になっております。

ですがこれを有効にしていると、ゲーム全体のスピードが遅くなってスムーズな視点移動や操作などが出来なくなってしまう欠点もあります。

なのでPCのスペック的に問題が無いと思う方はオプション設定からこの垂直同期を無効にしておく事をオススメします。

概要

本作はタイムマシンを使った実験の失敗によって世界が崩壊の危機に陥るという所謂タイムスリップ物です。

簡単に内容を説明しますと、主人公ジャック・ジョイスの親友であるポール・セリーンは、タイムマシンによる実験が失敗した際にマシンから出られなくなってしまい、やむを得ず未来にタイムスリップしたのですが、そこで「時間の終わり」という世界の滅亡や、その前段階である「断裂」という時間の流れが崩壊する現象を目撃します。

そしてその結末や現象は避けられず、すぐには解決も出来ない物と認識した彼は、世界の滅亡後の環境でも選ばれた極少数の人間だけを生存させ、そこで事態の解決策を研究させる「ライフボートプロトコル」という計画を推し進めて行きます。

それに対してジャック・ジョイスは「断裂」そのものを修正して「時間の終わり」を回避しようとする立場であり、そのために「ライフボートプロトコル」の発動に必要な対抗手段と呼ばれるアイテム「C.F.R」を手に入れようと、ポールが作り上げた大企業モナークソリューションと奮闘していきます。

本作はこの二人の対立を中心に様々な人物の思惑が錯綜するストーリーとなっております。

特徴

本作の特徴は時間を操る能力を使ったアクションと、非常に重厚なストーリーです。

時間を加速することによる高速移動や、特定の範囲の場所の時間の流れを遅くして敵に強烈な一撃を叩き込むといった事は勿論、周囲にバリアを張って敵の銃弾から身を守ったり、衝撃波を発生させて多くの敵を一度に吹き飛ばすと言った一見時間とは無関係そうな能力を使うことも出来ます。

ゲーム上で時間を操る際の描写としての代表的な例は「MAX PAYNE」や「F.E.A.R.」などに登場した自分以外の周囲の動きが遅くなる、所謂「バレットタイム」が存在しますが、本作はバレットタイムではなく上記したような様々な能力によって時間を操る感覚をプレイヤーが体験できる珍しいタイプの作品となっています。

能力はマップ上で入手できるスキルポイントを使って更に強化することも可能です。

また、プレイヤーの選択によってストーリーの流れが若干変化する分岐システムも導入されています。

これ自体はそれほど珍しい物ではないのですが、本作には高いクオリティの3Dムービーだけでなく、30分近くというゲームに導入される物としては異例の長さを持つドラマの様な実写ムービーが入っており、分岐によってこれらの流れも変化していくので、映画の流れをプレイヤーが変えていける様な感覚も体験する事が出来ます。

悪いと思った点

ゲームプレイ時間の大半が「見る」「読む」「探す」

実写含めた非常にクオリティの高いムービーや、徐々に引き込まれるしっかりとしたシナリオを持っている作品なのですが、TPSゲームとしてみると若干微妙に感じる方も居ると思われます。

理由としてはこれらのストーリーを十分に楽しむためには、30分近い長さの実写ムービーに合わせてマップに多数存在する資料を探し出して閲覧しなければならず、それらがプレイヤーが敵と戦う時間よりも長くなっているからです。

資料はマップ上の至る所に散らばっており、それらの内容はモナークソリューション内部でやり取りされたメール、タイムマシンの技術に関する資料、建物のマップ、壁に書かれた絵など豊富にあるのですが、この中でも特にメールやタイムマシンの技術に関する資料は内容がとても長く記述されている物が多く、一つ読むだけでもそれなりの時間が掛かってしまいます。

また、マップ上には隠しアイテムとしてスキルポイントを得ることが出来る光が存在しており、資料の様なアイテムだけではなく戦闘を有利に進めるためにはこちらも探す必要があります。

これらを受け入れることが出来る方であれば大丈夫だと思うのですが、単純にTPSゲームをプレイしたい層からすると、それ以外の事に多くの時間を費やされる事には恐らく耐えられない方も居ると思われるので、もう少し戦闘シーンを増やして資料の文量や一度に再生するムービーの時間などを減らすなどして、TPSゲームとしての部分も突き詰めて欲しかったです。

能力を当てるのに慣れが必要

主人公が使える能力の内、敵の周囲の時間を遅くする技と、衝撃波を発生させて敵を吹き飛ばす技はTPSゲームらしく相手に発射することで使用することが出来ます。

ですが本作の当たり判定は割とシビアに設定されている様でして、完全に狙いを合わせてから使わないと敵を通り越して遥か後ろの全く見当違いな場所で能力が発動してしまったり、そもそも発動自体しなかったりと言った事が幾度となくありました。

コツとしては敵の体ではなく敵の足元の地面に対して使うようにすると大抵当たってくれるのですが、殆どのゲームではこういった能力による攻撃は大雑把に狙っても当たるようになっておりますので、本作の判定のシビアさには少しストレスを感じる時が多かったです。

特に衝撃波の方は一度使用すると再使用までかなりの時間が掛かるのですが、不発になった場合でも能力を使ったとみなされて再度使える様になるまで待たなければいけない為、時折状況がかなり不利になってしまう点にも困らされました。

また、背中の弱点を攻撃することでしかダメージを与えられないジャガーノートという敵が後半になると出てくるのですが、この敵の弱点部分がかなり小さく、更に背中には空間が歪む様なエフェクトが掛かっている事によって、弱点の場所が即座にわからず攻撃が成功しない事もあって、倒すのにかなりの時間が掛かってしまう事などもありました。

個人的にこの当たり判定の部分は全体的に判定を緩くして欲しかったですね。

一部の音声で日本語字幕が表示されない

本作の殆どの部分は日本語に対応してくれているのですが、ゲーム内のラジオやテレビから発せられる音声には日本語の字幕が表示されず、どんな内容を喋っているのかが全く分からない時がありました。

この点は公用語が英語であるプレイヤーには全く問題ありませんので、英語圏以外のユーザー特有の不満ではあるのですが、ストーリーが最大の売りである本作で一部であっても内容が分からない部分があるのは非常にもどかしく感じましたので、この点はなんとか改善して欲しかったです。

実写ムービーを正常に見れない時がある

本作に導入されている実写ムービーはその長さと高画質によって非常に大容量なので、データをインストールすると色々と問題があると考えられている為なのか、実写ムービーだけはストリーミングによってデータを外部からダウンロードしながら再生するようになっております。

ですがそのダウンロードが時折上手く行かない時があり、正常に実写ムービーを再生できない事が何度かありました。

Xbox One版ではこういった問題を回避する為に、75ギガ程度の容量を持つ実写ムービーを全て合わせたエピソードパックという物が用意されており、そちらを事前にダウンロードしておくことで、この様な問題を解決することが出来るみたいなのですが、私が持つSteam版ではエピソードパックをダウンロードして適用する方法が分かりませんでした。

常に見れないということは無く、ストリーミングの調子が良いと一度も問題なく最後まで視聴することが可能なのですが、出来ればSteam版でもエピソードパックをダウンロード出来るようにして欲しかったですね。

良いと思った点

非常にクオリティの高いムービーとグラフィック

実写と3Dの両方で表現される派手なアクションシーンや、世界の時間が崩壊していくシーンの描写などは非常に見応えがあり、ストーリー展開もクライマックスが近づくに連れて徐々に盛り上がって行くため非常に引き込まれました。

本作では時間が停止した際には水中の中の様な空間が歪む特殊なエフェクトが現れたり、それ以外の普通のシーンでも光や草、キャラクターの肌や単なる廃墟の壁に至るまで細部に拘ったグラフィックのクオリティが2020年現在の最近のゲームでも滅多に見れない程に高く、ムービーでは俳優の演技やカメラワークの演出など、全体的にハリウッドの長編映画と殆ど変わらない程に作り込まれておりました。

 

ここまで描写面に力を入れているゲームはかなり珍しいと思います。

時間を操れる感覚

戦闘シーンやマップの謎解きの際などに、プレイヤーは時間を操る能力を使って切り抜けていくのですが、その感覚は他のゲームでは中々体験出来ない物だと思いました。

高速で移動して敵の背後を取ったり、時間を遅くする空間を作って複数の弾丸を静止させ、その能力の解除と同時に一度に弾丸を敵に叩き込んで吹き飛ばす攻撃などはかなり爽快感がありますし、謎解きのシーンでは特定の範囲の時間のみを巻き戻して足場を作るなどの描写もあって、それらが高いクオリティのグラフィックで表現されているので、プレイしていてTPSゲームとしてだけでなく視覚的にもとても楽しかったです。

まとめ

アクション ☆☆

射撃や移動といった部分には一般的なTPSゲームと比べても特に問題を感じる様な事は無く、時間を操作する能力が使える点も面白いのですが、ゲーム全体を通して見ると戦闘シーンでは出来ることが限られており、後半になるにつれて戦い方がやや単調になってしまうのが少し残念でした。

武器も同時に3つしか持ち運ぶことが出来ず、それらは時間操作の技術を使った新しい兵器などでは無く、現実に存在する単なる拳銃やアサルトライフルでしたので、この事も戦闘が単調に感じた原因の一つだと思います。

作中の資料などで言及されていた時間の終わりに生息する怪物「シフター」との本格的な戦闘も本作では実装されず、強大な能力を持った敵と渡り合う戦闘シーンがラスボス以外では発生しない上に、そのラスボス戦も殆どが普通の雑魚キャラの援軍と戦う場面が殆どでしたので、後半になるにつれてクオリティの高いムービーでストーリーが盛り上がる一方で、戦闘シーンは徐々に出来ることや大きな変化が無くなっていく印象を受けました。

また、本作はギアーズオブウォーの様に物陰に伏せる時には手動でカバーを行うのではなく、障害物に近づくとキャラクターが自動でその影に伏せてくれる様になっているのですが、その際に上手く隠れることが出来ていないのか、敵の攻撃が当たる事がたまにあって困る時がありました。

これは逐一カバーを行わなければならない煩わしさを軽減する為の仕様だとは思うのですが、上記の様な問題もありますし、そもそも物陰に隠れる事自体も戦闘の楽しさの一つであると思っているので、出来ればカバーの仕様は他のギアーズオブウォーなどの作品と同じにしてもらいたかったですね。

ストーリー ☆☆☆☆☆

良く作り込まれたシナリオとそれを十分に表現したムービーによってストーリーのクオリティは非常に高く、先の展開が気になって夢中でプレイすることが出来ました。

実写ムービーの再生時間が30分近くある点はゲームとしてどうかと思わなくもありませんが、その内容自体はとても面白いので後半では特に気になりませんでした。

強いて欠点を上げるとすれば本作は続編を作ることを前提にしている為、黒幕の本当の目的や世界の滅亡を本当に避けることが出来たのか、協力者を助けることは出来るのか、などの伏線が回収されずに残っているという点ですが、本作のストーリーはとても面白かったので、次回作ではどの様な展開になるのか大いに期待できますし楽しみでもあります。

音楽 ☆☆☆☆

派手な音楽はほぼ戦闘シーンでしか流れず、耳に残るBGMはあまりありませんがそれでも緊張感を盛り上げる要素としては良く機能しており、特に不満点はありませんでした。

個人的には本作は効果音が素晴らしく、銃や音声と言った環境音のクオリティや、時間を操作した時のノイズが掛かったような独特の効果音など、本作の世界観に非常にマッチした物になっていると感じました。

また、各チャプターの合間にボーカル付きの短い曲が流れるなど、海外ドラマの様な演出も取り入れられていたのも印象的でした。

品質 ☆☆☆☆

主人公が壁を通り抜けて外側に落ちてしまうと言った様な3Dゲームにありがちなバグの類はほぼ存在せず、全体的にプレイに支障をきたす様な事もありませんでした。

ただ一部のラジオやテレビの音声に日本語の字幕が付いていなかったり、メールの内容が長過ぎると言った点など、若干配慮に欠けている点もありました。

エフェクトやムービー、実写におけるセットや俳優の演技などのクオリティは非常に高く、かなりの時間と費用を掛けて作り上げた事が分かります。

総評 75/100点

グラフィックやムービーの出来が非常に良く、物語が動き出す後半からの怒涛の展開は引き込まれる魅力が十分にあり、一気に最後までプレイしてしまいました。

考察しがいのあるストーリーも良く作りこまれており、次回作での新たな展開を匂わせるラストシーンなどもあってゲームクリア後はちょっとした長編映画を見終わったような感覚を覚えました。

ですがTPSゲームとしての側面は長過ぎるムービーや資料を見る時間に押されてしまい、若干影が薄く感じる点もありました。

時間を操る能力自体は面白いのですが、それ以外の戦闘部分では他のTPS作品と比べて突出している程の楽しさや魅力があまり無く、後半では戦闘はオマケ程度にしか感じませんでした。

良くも悪くも重厚なストーリーが売りの作品ですので、合う方と合わない方が極端に分かれる作品であり、恐らく万人受けすることは無い作品だと思いますが、こういったストーリー重視のタイプのゲームが好きな方に取ってはとても楽しめる一作であると思います。

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