【ゲーム批評】SF系ソウルライク The Surge

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ドイツの企業であるDeck13 Interactiveが作ったSF系のソウルライクゲーム「The Surge」の批評を行います。

内容は本編のネタバレを含みますのでご注意下さい。

日本語について

公式で日本語に対応済みなので、言語面で問題になることは無いと思います。

概要

時は21世紀の半ば、深刻な大気汚染によって、地球に住む人々は滅亡も危ぶまれる事態に陥っていました。

この事態の解決に乗り出したのが、神経インプラント技術による外骨格「リグ」の世界的なシェアを誇るcreoという大企業のCEO「ジョナ・グッテンバーグ」でした。

彼はその莫大な資金と技術力を用いて大気汚染を解決する計画である「プロジェクト・リゾルブ」を開始し、ロケットによって空中に散布されたナノマシン「リゾルブ」によって、世界の大気汚染は徐々に改善されて行きました。

ですが、リゾルブは長期的に見ると人体に対して悪影響をもたらす事が判明し、この事実は世界の救世主として扱われていたcreoに一転暗い影を落とす事になり、creoの役員や研究者達はその解決策を考え出す事を余儀なくされていました。

そんなある日、前職で下半身不随になってしまった主人公のウォーレンはcreoに警備員として採用され、creo本社でリグと神経インプラントの導入手術を受けるのですが、手術システムの異常によって麻酔が用いられずに手術を受けてしまい、ウォーレンはその激痛によって気絶してしまいます。

4日経過して彼が漸く目を覚ますと、creoの工場の中は神経インプラントの異常によって周囲の人間に襲いかかる生ける屍と化した元従業員や、凶暴化した作業用ロボットが蔓延る地獄と化しておりました。

そんな中でリグの力によって歩けるようになったウォーレンは、自らの生存の為、そしてcreoに何が起きたのかを知る為に孤軍奮闘していくというのがこのゲームの大まかな物語です。

ダークソウルやデモンズソウルはファンタジーかつ中世のような世界が舞台になっていますが、The Surgeは近未来の地球が舞台になった、SF寄りの珍しいソウルライク作品と言えるでしょう。

因みにタイトルにもなっているSurgeとは「大波」や「動揺」と言った意味の言葉であり、ゲーム内では物語の舞台であるcreoが、本編のような状況に陥った原因である大規模な停電を引き起こした現象を意味しています。

特徴

このゲームは少し特殊なゲームで、ソウルライクではあるものの、やや複雑にも思える独特な要素が取り入れられています。

例えば敵との戦闘の際には、頭・胴体・両手足それぞれを個別にロックオンすることが可能で、その状態で攻撃を行って各部位にダメージを与えることで、一部の敵のアーマーや武装を破壊することも出来ます。

各部位にはロックオンした際にオレンジ色で表示される部位と、青色で表示される部位が存在します。

青色は敵の弱点を表しており、この部位を攻撃することで敵を怯ませる事が可能です。

逆にオレンジ色の部位を攻撃した際には敵を怯ませる事が出来ず、上手く敵の隙を突かないとそのまま反撃を受けてしまいます。

この仕様がある為、敵との戦闘の際にはソウルライク定番の敵の攻撃を避けつつ反撃を当てていく技術に加えて、弱点を正確に狙う的確で素早い状況判断が求められます。

2つ目の独特な点は、敵に攻撃を当てるとエネルギーを得られるということです。

このエネルギーはダークソウルで言う所の魔力ゲージの様な物で、一定量を消費することで体力の回復や、ドローンを召喚する、といった事が可能になります。

このエネルギーは通常は時間と共に徐々に減少していく仕様になっていますので、基本的にストックしておくことは出来ません。

また、このエネルギーを用いる事で、人型の敵の体力をある程度減らした際に、各部位を切断して即死させる「フィニッシュ」攻撃を行うことが出来、これで相手を倒すことで切断した各部位のパーツや武器を取得することが出来るハクスラ要素も取り入れられております。

主人公であるウォーレンの強化方法も独特で、例えばダークソウルではレベルが上がる毎にスキルポイントを取得することが出来、それを好きなステータスに割り振る事で主人公を強化することが可能ですが、本作ではレベルが上がってもステータスには一切影響せず、その代わりにインプラントをはめ込む為のスロットがアンロックされます。

インプラントとはダークソウルで言う所の指輪であり、これをスロットにはめ込む事で、体力やスタミナゲージを増加させたり、新しい回復手段を得る事が出来ます。

装備の面においては、武器や防具を強化出来る点はダークソウルとほぼ同じですが、本作には武器のカテゴリーごとに熟練度というものが存在し、同じカテゴリーの武器で敵を倒し続けると熟練度のレベルが上昇し、これが高くなればなるほど攻撃力が増加していくという仕様になっています。

本家のダークソウルとの差別化の為だとは思いますが、ファンタジーではなく近未来を舞台にした点や、こういった様々な要素が取り入れられている点から、本作は全く新しいソウルライクを実現しようとしているとても意欲的な作品であると思います。

悪いと思った点

ですが、こういった定番とは異なる新しい要素を取り入れたゲームは、必然的に開発者側にもそれぞれの要素を考慮して優れた調整を行うバランス感覚が求められますが、本作ではその調整の部分で非常に残念な点が目立つ様に感じました。

敵の攻撃力が高過ぎる

これは単純ではありますが、このゲームの戦闘が非常にストレスを感じるものになっている要因の一つです。

ソウルライクの作品ではザコ敵が強いというのはお決まりな事ではありますが、本作の敵は一部を除いて全体的に攻撃力が異常な程高いので、プレイヤーが少しでも回避やガードをミスしてしまうと連続攻撃などによって体力MAXの状態からでも普通に即死します。

対策としては体力の最大値を上昇させるインプラントを大量に装備するのがこのゲームでは一般的な方法かと思いますが、そのせいで体力増強系のインプラントの装備がほぼ必須になってしまう為、他のインプラントを付け難くなってしまったりと、ゲームシステムの魅力を打ち消している様に感じました。

また、本作にはダークソウルのような敵の攻撃を弾ける盾が無く、武器を用いてガードを行うのですが、その使い勝手も余り良くない為、敵の攻撃は大抵の場合ステップで回避する必要があります。

この為、狭い場所での戦闘ではステップで回避する分のスペースを取れ無いので非常にやり辛く、そんな場所に即死レベルの攻撃を行ってくる敵が出てくるシーンが続くとうんざりしてしまう事がありました。

敵が硬過ぎる

敵の攻撃力が異常に高く、ワンミスで死ぬ可能性がある為、敵との戦闘は長引かせずにさっさと終わらせてしまいたいのですが、このゲームの敵は妙に硬く、結構な回数の攻撃を当て続けなければ倒すことが出来ません。

そして単に硬いだけではなく、ガードや攻撃判定のある回避行動なども行ってくる為、即死のリスクを避ける為にまず相手に攻撃させて、その隙にこちらが攻撃するというのが定石のこのゲームでは、攻撃できるタイミングが限られてくるので自然と戦闘時間も長くなってしまいます。

こちらが相手に数発攻撃を当てても、一度のミスで全て水の泡になってしまうので、戦闘が苦痛に感じる事が多く、ラスボス付近のステージでは更に敵がパワーアップするので最早まともに戦ってられず、殆どの敵はスルーしていました。

ダークソウルやデモンズソウルでも確かに強いザコ敵は存在していましたが、このゲームの場合はその強さに理不尽を感じる部分が多く、そんな敵が何度倒しても復活してしまうというソウルライク要素が、更に徒労感までプレイヤーに与えている様に感じます。

弱点を攻撃しなければ怯まないという仕様

敵は弱点に対する攻撃以外はある程度怯まずに耐えることが可能です。

そのため誤って弱点ではない部分を攻撃してしまうと、敵が格闘ゲームで言う所のスーパーアーマーの様な状態になってしまい、そのまま敵の攻撃を止めることが出来ずに反撃を受けてしまいます。

この仕様によって、弱点を攻撃すると「有利になる」のではなく、弱体を攻撃「しなければならない」ので、戦闘時にはいちいち相手の弱点探しから始める必要があり、プレイしている側からすると、余計な手間が一つ増えているだけの様に感じてしまう時がありました。

特に物陰に隠れている敵に不意打ちされた際には、即座に対応しなければいけないのに、この弱点探しをまず行わなければいけないので、せめて敵をロックオンした際には最初から弱点をロックする様にして欲しかったです。

また、このシステムのせいで同じ種類の敵であっても攻撃を当てる部分によって怯まなかったりする為、複数人の敵を一度に相手取るのは容易な事ではなく、仕様によって無駄に難易度が上がっているだけの様に感じました。

後半では全身がオレンジ色で、弱点自体が存在しない敵も出現するようになりますので、これなら単純に敵ごとに怯む者と怯まない者を設定したほうが、プレイヤーにとっても分かり易くて良かったのではないかなと思います。

以上の点から、ザコ敵との戦闘はソウルライクに限らず多くのアクションゲームでその大部分を占める要素なのですが、本作のそれはお世辞にも出来が良いとは思えず、特に爽快感という面においては全体的に見ると他の作品に比べて劣っているように思いました。

複雑なマップ

本作のマップはcreoの工場や研究室内部を舞台にしているのですが、妙に入り組んでいる上にその構造が立体的で、似たような景色の場所が多く、道に迷う事が多々ありました。

ナビやミニマップ的なものがあれば良かったのですがこれもなく、一体何処へ行って何をすれば良いのかを殆ど理解できずに最初から最後までプレイしていたように思います。

複雑なマップを理不尽な攻撃を行ってくる敵と戦いながら手当たり次第に捜索するというのは、最初の比較的対処しやすい敵が多い内はまだ良いのですが、後半になってくると徐々に苦痛になって行き、ラスト付近では早くクリアして楽になりたいという気持ちの方が強くなってしまいました。

確かにソウルライクのゲームにはナビや詳細なマップが無い作品が多いですが、これだけ複雑なマップを作るのでしたらナビを実装するなど、もう少しプレイヤーに配慮して貰いたかったです。

熟練度システムによる弊害

同じカテゴリーの武器を使い続けていれば熟練度レベルが上がり、攻撃力が増加するという熟練度システムはソウルライクのゲームにしては画期的ではありますが、このシステムは一つのカテゴリーの武器を使い続ける事のメリットを生み出すと同時に、別のカテゴリーの武器がプレイヤーに使われ難くなってしまうというデメリットを生み出している様に感じます。

後半になって敵が硬くなってくると武器の攻撃力は少しでも高いほうが良いので、熟練度を育てていないカテゴリーの武器が新しく手に入っても装備する気が起きず、結果的に多くの武器があるにも関わらず、特定のカテゴリーの武器ばかりを使う様になってしまい、折角実装されている様々な武器の魅力にプレイヤーが殆ど触れること無くゲームを終わらせてしまうのでは無いでしょうか。

実際私の場合は最初から最後までほぼ片手剣カテゴリーの武器ばかり使っており、他の種類の武器を使う事は殆どありませんでした。

出来れば、状況に応じて色々な武器を試しやすい様に、武器の熟練度は全てのカテゴリーで共通の物にして欲しかったです。

全体的に使い回しが目立つ

本作はアセットなどの使い回しが目立ちます。

例えばマップ上だと裏道のような通路を使う場面があるのですが、この通路の構造はマップのあらゆる場所で使い回されており、裏道が出てくると同じ様な風景を何度も見ることになります。

ソウルライク作品は探索も魅力の一つなので、同じ物を使い回してマップを複雑にするぐらいであれば、マップを簡素にしてでも色々な場面を見せて欲しかったです。

敵のモデルやモーションなどもその絶対数が少なく、時にはボス戦でさえもザコ敵や前のステージで出てきたボスのモデルやモーションを使い回した物が出て来ます。

巨大な機械の怪物を、強化骨格を装備した主人公が倒すというロマンもこのゲームの魅力の一つだと思うので、せめてボスぐらいはモデルやモーション含めて全て完全にオリジナルの物を作って欲しかったですね。

良いと思った点

グラフィックがとても綺麗

巨大なロボットから地面に転がる空き缶まで、非常に精巧なグラフィックで表現されています。

どんな場所で周囲をグルリと見渡しても違和感のある場所はほぼ存在せず、全体的に丁寧に作られている事が分かります。

特に光沢のクオリティは素晴らしく、機械の持つ迫力や無機質さをよりリアルに見せる事が出来ています。

攻撃の際のモーションも、敢えてグラフィックをぼかしたり、残像を付ける事によって、とても迫力のあるアクションシーンが上手く表現されています。

攻撃のモーションのクオリティが高い

単純に武器を振り回すのではなく、ちゃんとした武術のような連撃を行ったり、武器の重さにたたらを踏んだりと、細かい部分まで良く動くモーションになっています。

特にフィニッシュ攻撃のモーションはとても格好良く、アクション映画のワンシーンの様な演出を見ることが出来ます。

モーションが格好良いゲームといえばカプコンが開発しているアクションゲームであるデビルメイクライシリーズが有名ですが、このゲームのモーションはあそこまで派手ではないものの、しっかりとした人間らしい動きの中でのスタイリッシュなアクションとして作り込まれていると思います。

まとめ

アクション ☆☆☆

モーションなどのモデルの挙動はよく出来ると思いますが、実際の戦闘シーンになると、敵の攻撃力や耐久力がやや過剰な程に高くされていると感じる部分があり、戦う事を楽しみたいという方にとっては余りおすすめ出来ません。

敵との戦闘時にも、こちらが取れる選択肢が少なく、強力な敵を知恵を使って何とかする事が出来ず、真正面から自分の腕っぷしで倒すか、或いは無理やり脇を走り抜けて素通りするかという2択しか無い所が個人的に戦闘の自由度が低い様に感じました。

ガードしながら移動できなかったり、回復手段を増やそうとすればステータスの強化を犠牲にしなければ行けないという仕様もあって、アクションゲームの初心者などに対する救済措置というものが殆ど無く、少しプレイヤーに対する配慮が足りない印象を受けます。

ストーリー ☆☆☆

世界を救おうとした行為によって、世界が危機的状況になるという、ある意味こういった世界滅亡物の王道ストーリーであるわけですが、次回作に続く事が前提で作られている為に、ラストシーンが中途半端な所で終わっていて少しモヤモヤしてしまいました。

また、ゲームを遊んでいるプレイヤーが自然にストーリーを十分理解出来る作りになっている様に思えず、だいぶ積極的に情報をプレイヤー側から求めていかないと、その全貌が良くわからないままゲームが終わってしまうように思いました。

音楽 ☆☆☆

安全地帯であるメッドベイで流れる何とも言えない音楽や、ボス戦などで流れる音楽など、基本的なものは作られており、決して悪くはないのですが、そこまで特筆すべき物でも無い印象を受けました。

そもそもマップの探索時にはBGMが全く聞こえない無音の場面も多い為、音楽の面にはそこまで力を入れていないのかなと思います。

品質 ☆☆☆

モデルのモーションやグラフィックはとても素晴らしいものがありますが、一方でゲームバランスの歪さや、アセットを使い回している点なども目立ちます。

敵の種類の少なさに関しては、後から発売されたDLCである「A Walk in the Park」で解決しようとする動きもあった為、素の状態での敵の種類の少なさやその使い回しの点については開発陣の方でも問題意識を持っていた様です。

総評 60/100点

それぞれの素材の出来はとても良く、確かに光るものはあるのですが、それら全てを一つにまとめる際の調整が十分では無く、結果的に作りの粗い雑な作品になってしまっている様に思います。

特にラストステージなどは、本作の粗い部分の集大成の様な作りになっており、悪い意味で「The Surge」という作品を象徴していると言えるでしょう。

難易度が高いという事はそれ自体が面白さに繋がる物と、只単に理不尽を感じるだけの物の2種類があると思いますが、その点で言うと本作は後者の様なゲームバランスになってしまっている印象を受けました。

開発元であるDeck13 Interactiveは、WebメディアであるGame Sparkの取材に対して、The Surgeの敵からパーツをもぎ取れる仕様に関してインタビューを求められた際に、「より多くの選択肢、より多くの困難な判断を求めるもののほうがクールだ」「よりペースが早く、軽快で直線的なもの」という旨のコメントを出していましたが、実際に本作をプレイした感想としては、この2つはその仕様上ゲーム内で両立出来ていない様に思えました。

この辺りをもう少し上手く調整することさえ出来ていれば、万人受けとまでは言わないまでも、もっと良い評価を受ける作品になれていたと思うのでとても残念です。

2019年には続編である「The Surge 2」の発売が予定されているようですので、そちらでは本作の悪い部分が改善されている事を祈ります。

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