今回はSteamなどで販売されているゲーム「シェンムー3」をクリアしましたのでその感想を書いていきたいと思います。
内容はゲーム本編のネタバレなどを含んでいるので、まだ未プレイの方はご注意ください。
概要
「シェンムー」とは?
本作の感想を書く前にまずシェンムーという作品について簡単に説明します。
シェンムーはセガが開発したアクションアドベンチャーゲームで、初代の「シェンムー」は1999年に、2作目の「シェンムー2」は2001年に発売されました。
ゲームの内容としては当時としてはかなり珍しかったオープンワールド要素を取り入れた自由度の高さや、フルボイスで喋り時間毎に行動が変化する数多くのNPCによるリアルな街の描写、QTEシステムの導入などの挑戦的なゲーム性とそのクオリティの高さで多くのプレイヤーを魅了し、2021年現在に至るまで根強いファンからの人気を獲得している作品です。
実は自分はシェンムーの1と2は未プレイですので、上記に書いた事をリアルタイムで体験することは出来ませんでしたが、シェンムーというゲームの名前だけはなんとなく知っていて、2から20年近くの年月を経てクラウドファンディングなどのファンからの支援を受ける形で発売されたシェンムー3に興味を持ったので今回プレイしてみました。
因みに本作は自分の様に3から初めてシェンムーに触れるプレイヤーの事を考慮してか、最初のメニュー画面から初代と2のストーリーを解説したダイジェスト映像を見ることが出来ます。
こちらダイジェストムービーの内容も簡単に説明しますと、横須賀に住む主人公「芭月涼」の父親「芭月巌」が藍帝(ランテイ)という男に殺され、父親が持っていた清王朝の財宝の在り処に繋がると言われる石鏡「龍鏡」を奪われてしまいます。
父の復讐を誓った涼は自宅に隠されていたもう一つの石鏡「鳳凰鏡」を見つけ、それを手掛かりに藍帝を追って様々な人々と交流し、情報を集めていく中で、藍帝の居場所を知る為には中国に行く必要があると知り、その後単身中国の香港へ渡り、やっとの思いで父の仇である藍帝と遭遇することは出来ましたが、倒すことは出来ずに取り逃してしまいます。
その後、藍帝を追って白鹿村(ハッカソン)という村へ向かう途中で玲莎花(レイ・シェンファ)という少女と知り合い、その莎花の父親が自分の父が持っていた石鏡を作った人間の一人である事を知ります。
そして莎花の父親に合うために仕事場である洞窟を訪れたのですがそこに父親の姿は無く、代わりに「私の役目は終わった。鳳凰を携えし者(涼)と共に行け」という莎花宛の置手紙と宝剣「七星剣」、巨大な龍鏡・鳳凰鏡の石の彫刻を発見した所からシェンムー3の物語が始まります。
特徴
シェンムー3の世界は大きく分けて会話、ミニゲーム、探索、戦闘の4つの要素で構成されています。
まず会話ですが、街や村で生活している様々な人々はそのほぼ全てに話しかける事が可能になっており、各会話の内容はその時々のゲームの進行度によって変化し、現在主人公が探している物や困っている事などに対するヒントを得る事が出来ます。
次にミニゲームですが、シェンムー3の世界ではギャンブルやバイト、そして修行などが全て何らかのミニゲームになっており、各内容毎にタイミングを合わせてボタンを押すものや、単純にサイコロを振るだけの物などが用意されています。
通常時は三人称視点の本作ですが、一人称視点で周囲を注意深く探索する事も出来、この状態では隠し要素や自生している生薬を発見することも出来ます。
道場での試合やストーリーのイベントなどでは素手での戦闘を行うことになります。
戦闘では敵の攻撃を移動で躱したりガードで防ぎながら隙を伺い、4つのボタンで繰り出す攻撃により敵の体力を0にすれば勝利出来ます。
この様に様々な行動が出来るのがシェンムーの特徴ですが、主人公は時間経過や行動と共に画面左下に表示されている体力が徐々に減少し、一定以下になると走れなくなってしまうので、適度に食事をして体力に気を配る必要もあります。
悪いと感じた点
作業感を感じてしまうゲーム内容
広大な街や村の中で様々な種類のアクションを行う事が出来る本作ですが、鍛錬と金策を行おうとすると途端に作業感が増してしまう事に少しうんざりしました。
本作での鍛錬と金策はミニゲームの要素に当たる物なのですが、一度に入手することが出来る経験値とお金の量が非常に少なく、十分な成果を得る為には同じミニゲームを何度も何度も繰り返し行う必要があります。
別にストーリー攻略にさほど必要が無いのなら最低限度の事だけをして先を急げば良いのですが、本作では難易度ノーマルでも鍛錬を出来る限り行っておかないと戦闘が割と辛く、お金に関してはストーリー上で2000元以上の高額なアイテムを購入することを2度要求される為、嫌でも鍛錬や金策を行わなければいけません。
また、主人公の攻撃力を強化する為には「技書」という特殊なアイテムを購入してから鍛錬する必要がある仕様上、この鍛錬と金策は密接な関係を持っており、一つの技書につき上がる攻撃力は一定な事もあって、高い攻撃力を身につけようとすれば幾つもの技書を購入する必要があり、結果的に普通にレベル上げだけをしていればある程度強くなれるゲームよりも金策を行う事による手間が必要になっています。
この当たりは修行やアルバイトなどでもう少し一度に貰える報酬を増やすなり、ストーリーで指定される高額なアイテムの値段をもう少し安くするなどして、作業感を覚えない程度に鍛錬や金策をすれば良い様にして欲しかったですね。
因みに金策は普通のアルバイトなどで貰える報酬が安すぎる為に主にギャンブルで稼ぐのですが、その際に占い師から色占いをしてもらい、花鳥風月などで指定されたラッキーカラーの場所に賭けると、体感7割程度の確率で当たりを引くことが可能です。
村の占い師は坊洛台、街の占い師は新天地近くの病院の横の狭い路地を抜けた先に居ます。
また、本作はどこでもメニュー画面からセーブとロードが出来ますので、ギャンブルをする前にセーブして外したらロードしてまた再挑戦する事で無駄金を使わずに効率を上げる事が出来ます。
窮屈な操作性
ゲーム後半の舞台となる街では走るのが禁止されているエリアや上り下りの際に移動が遅くなる階段が多くなり、単純に移動するだけでも時間がかかる様になってしまう事に窮屈さを感じました。
本作は時間経過で体力が減少する仕様のあるゲームでもありますので、その面から考えてもこの辺りはもう少しスムーズに移動できるようにして欲しかったです。
また探索モードで調べ物をする際、例えば戸棚を調べる時などに顕著なのですが、一つの戸棚を見る、開ける、中に何かあれば調べる、閉めるという行為を全てゆっくりと、ボタンを押さなければ実行されないアクションで行う事になり、全て調べるのに非常に時間が掛かるのも気になりました。
調べる場所が少なければ良いのですが、探索が必要になる場所では大抵の場合多くの戸棚などが存在し、その一つ一つにこの一連の動作を行わなければ行けないので面倒くささを感じます。
他にも居間に上り下りする際の靴を脱いだり履いたりするムービーを読み込むためにロードが挟まれたり、同じ会話シーンが何度も出てきたりと演出を優先するあまりにゲームの快適さが損なわれている様に感じる面もありました。
ロードや動作などが遅くて時間が掛かるとそれだけゲームの本編をプレイするまでの無駄な時間が長くなってしまうので、冗長な部分はもう少し削る様にするなどして欲しかったですね。
戦闘での良くわからない仕様
これは仕様なのかバグなのかはわかりませんが、戦闘を行う際に主人公が移動できるエリアは制限されている一方で敵にはその制限が無いようで、敵を殴り飛ばしたり敵が下がるなどして主人公が移動できるエリアの範囲外に行かれると、主人公が敵に近づけず攻撃を当てることが出来ない事がありました。
飛び道具を使ってくる敵は居ないので主人公が対処できない場所から一方的に攻撃されるという理不尽な事は無いのですが、思ったように攻撃を当てることが出来ずもどかしい思いをしたので、出来れば主人公と敵キャラの移動可能エリアは同じ様に設定して欲しかったです。
また、敵キャラがあるタイミングでの攻撃を受け付けない無敵状態になっているのか、連続攻撃で敵を攻撃した際に、密着状態で行ったにも関わらず2段目や3段目が空振ってしまい、連続攻撃の最後のフィニッシュ攻撃を繰り出す前に反撃されたり、フィニッシュ攻撃がガードされてしまう事がありました。
隙を見て敵に攻撃を叩き込むのが重要なゲームの様に思いますので、隙を突いてもそれが失敗してしまう無敵時間があるのでしたら、敵キャラの見た目などですぐにそれと分かるようにして欲しかったです。
数が多く少し難しいQTE
現在ではさほど珍しい要素では無くなったムービー中などに任意のタイミングで指定された操作を行うことでその後のゲームの流れが変わったり、敵にダメージを与える事が出来るQTE(Quick Timer Event)システムですが、シェンムーはそれを導入した元祖的な作品でもある為か、その3作目となる本作でも多くのQTEが出現します。
ですがこのQTEは近年では安易に多用するとゲーム本来のアクション性が損なわれたり、作業感が増してしまうという理由で批判の対象になることもあり、一時期と比べて最近ではQTEを用いるゲームは少なくなっている様に感じます。
その点から見ると個人的には本作のQTEの傾向は回数がやや過剰で、対応するボタンの数が8つと多く、出現してから入力を受け付ける時間が割と短く、ラストシーンの手前では実際の戦闘の代わりにこのQTEだけを行って敵を倒してしまうという、批判されがちな部類のQTEである様に感じました。
敵にトドメを刺す時などのここぞという時の見せ場や必殺技で使っている物は良いのですが、それ以外の敵の後を追いかけるムービーや戦闘のムービーでQTEが使われる場面などでは、QTEではなく普通に自分が主人公を操作して敵を追いかけたり戦闘をしたいと思ってしまいました。
良いと感じた点
作り込まれた村や街での生活感のクオリティ
多種多様なNPCで賑わう村や街は雰囲気の完成度がとても高く、オープンワールドでありがちな人が多いのに無機質な街並とは全く違う生活感の溢れた活気のある風景が描かれています。
その風景を構成する古ぼけたゲームセンターや年季の入った店、壁に貼られたポスターや写真、暗くて怪しげな路地裏や寂れた神社など、一つ一つが細かな部分までこだわりが感じられる程に作り込まれている印象を受けました。
特に夕日が指す場面や街に明かりが灯る夜ではクオリティの高い街並が更に味わい深いものになり、観光スポットの写真の様な風景を見ることが出来ます。
グラフィックは物凄くリアルというわけでも無いのにとても素晴らしい街並が描かれているのは、製作者の高いセンスと、それをゲーム内で実現する為に地道な努力が行われてきた事の表れである様に思います。
戦闘の爽快感
上記の通り少し問題を感じる戦闘面ですが、敵の隙を突いてかっこいい八極拳の技を叩き込むのはカンフー映画の様な爽快感があってとても楽しいです。
敵を殴った時の効果音なども小気味良く、難易度も鍛錬を行ってしっかり強化していればヌルゲーでも無く難しすぎるわけでも無い丁度よい塩梅なので、クリア出来るとちゃんと達成感も得ることが出来ます。
個人的に本編でもう少し回数を増やして欲しかったと思うぐらい戦闘は楽しかったです。
情報を集めていく楽しさ
ゲームを進めていく際に単純にクエストマーカーなどで向かうべき目標の位置を示されたりするのではなく、村や街で出会うNPCと会話を重ねて自分がまだ知らない事について地道に調べていくという本作のゲームの進め方に面白さを感じました。
少しずつ情報を積み重ねてヒントを持ってそうな人を探して聞き出していくという流れは探偵ゲームなどでよく見られますが、本作はアクションゲームでありながらそれをクオリティの高い世界観で行う事が出来るので、他のゲームではあちこち走り回らされて面倒に感じてしまう所謂お使いゲー的な要素も、本作では情報を集める度に村や街の色んな側面を見る事が出来る為、最後まで楽しく行う事が出来ました。
まとめ
アクション ☆☆☆☆
様々な物事をミニゲームとして体験することが出来たりカンフー映画のような派手なモーションを用いたの戦闘が出来るなど、一つのゲームとしてはやれることの幅が広くて楽しかったです。
少し贅沢を言うなら、戦闘の回数をもっと多くして敵のガードを崩す投げが出来ればもっと戦闘に駆け引きが生まれて楽しめたかなと感じます。
ストーリー ☆☆
本作のストーリーは前半は村、後半は街を舞台に展開されるのですが、その内容が前半の村と後半の街のどちらも、敵のゴロツキを倒す→敵のボスが出てきて返り討ち→高いお金を払って奥義を身につける→奥義を使ってボスを倒す、と言うほぼ同じ流れを辿るのでストーリー展開の幅が狭い様に感じました。
また、本作では藍帝との戦闘シーンはありますが本格的な戦闘ではなく、主人公が軽くあしらわれて敗走するというあくまでもオマケ的な物で、終盤には人質にされたヒロインを助け出す為に主人公は自分が持っていた清王朝の財宝に繋がる石鏡の「鳳凰鏡」も敵の組織に渡してしまうので、本作のストーリーはヒロインの父を助けた事を除くと、宿敵である藍帝との直接の絡みも殆ど無く、敵の下っ端を数人倒した後にキーアイテムを奪われラスボスに負けただけで終わっており、シェンムーという作品の核心部分のストーリーが殆ど進んでいない印象が強かったです。
音楽 ☆☆☆
場面に合わせた曲調のBGMが適度に流れるので作品やシーンの雰囲気が崩れる事無く、またBGM自体のクオリティも高い為長時間聞いていても苦痛ではありませんでした。
敵を殴り飛ばした時の効果音やゲームセンター特有の効果音など、爽快感があったり違和感の無いものがしっかりと設定されていた様に思います。
ただ曲数自体はそれほど多くなく、同じ音楽を何度も聞くことになるので良くも悪くもあまり印象に残らない物の様にも感じました。
品質 ☆☆☆☆
観光スポットをそのままゲーム上で再現した様な村や街並は探索しているだけでも面白く、個性的かつフルボイスになっている各NPCの存在や、会話が状況によって変化したり、細かなオブジェクトにちゃんとアクセス出来る様になっている点など、非常に膨大な量の細かい作業をして作られた作品である印象を受けました。
一部バグの様な挙動などもありますが、オープンワールドを採用している作品にありがちな唐突な強制終了やフリーズと言った致命的なバグにはプレイ中には全く出くわさなかったので、膨大なオブジェクトを管理するプログラム技術の高さも感じました。
総評点数 65/100点
他の有名所のオープンワールドを採用しているゲームに比べると比較的行動できるマップの範囲が小さい様に思いますが世界観の完成度は非常に高いです。
ただ、それをストーリー展開の幅の狭さや作業感のある遊び方を強いられる点などで上手く活かしきれていない様に感じました。
本編の流れとはあまり関係の無い様な場所にも魅力的な場所が多くあり、これらを全体的に余すこと無く使えるぐらいに本編のストーリーが重厚なものになっていればもっと違った印象を受けたかなと感じます。
本作は初代からの多くのファンによる支援によって完成した作品なので、作業感や少し違和感のある描写はそういった過去作からのファンが求める「シェンムーらしさ」なのかもしれませんが、現代の作品をプレイしてきている身からするとそれが少し前面に押し出され過ぎている様にも思います。
ストーリーはまだ完結していませんので、何らかの大きな問題が無い限り次回作であるシェンムー4が制作されることはほぼ確定していると思いますが、そちらでは本作での微妙な点を改善して更により良いシェンムーの世界を作ってくれる事を願いたいです。
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